toruのブログ

月1くらいで記事書きたい。

AW3225QF を使い FINAL FANTASY VII REBIRTH をプレイする際に生じる HDR表示のトレードオフについて

1. 背景

  • 筆者は FINAL FANTASY VII REBIRTH (以後 FF7RB と略す) をプレイするためにゲーミングモニター AW3225QF を購入した
    • FF7RB を遊ぶ前に AW3225QF の特性を確認した結果は前回の記事を参照
  • FF7RB を 18時間ほどプレイして、筆者は HDR表示にトレードオフがあることを理解した
  • 今後のことを考えて、現時点で理解したトレードオフの内容を簡単にまとめることにした

2. 目的

3. 結論

3.1. トレードオフについて

筆者が理解した内容を以下に示す。

Smart HDR設定 *1 欠点 利点
DisplayHDR True Black 高輝度部分が白飛びしてしまい本来の色が表示されない 空などの APL が高いシーンを見ても輝度変化を知覚しない
HDR Peak 1000 空などの APL が高いシーンを見ると強烈に輝度の低下を知覚する 高輝度部分が白飛びせずに本来の色で表示される

合わせてトレードオフを視覚的に確認できるようにした GIFアニメーションを図1、図2 に(GIFは画質が悪いので動画1 を推奨)、注目して欲しいポイントを図3、図4 に、高画質版を動画1 に示す *2 *3

図1. フィールドで海を見た様子。
DisplayHDR True Black では雲のディテールが白飛びで失われている。
HDR Peak 1000 では輝度が異様に低下してしまっている。
Reference として用意した MBP の XDR Display では破綻がない。
図2. 日差しの強い街の様子。
DisplayHDR True Black では衣服のディテールが白飛びで失われている。
HDR Peak 1000 では輝度が異様に低下してしまっている。
Reference として用意した MBP の XDR Display では破綻がない。


図3. 図1 で注目して欲しいポイントを赤枠で示したもの 図4. 図2 で注目して欲しいポイントを赤枠で示したもの



動画1. 図1、図2 の高画質版の動画

この結果を受けて、筆者は悩みに悩んだ末、今後は HDR Peak 1000 を選択して FF7RB をプレイすることに決めた。 筆者は輝度低下よりも色ズレを嫌う傾向にあるからである*4

3.2. トレードオフ解消のアイデア(本末転倒・他力本願・非現実的なものを含む)

殴り書きレベルだが筆者が考えたアイデアを以下に並べておく。

  • OLEDモニターを使うのを諦める
    • 1000 cd/m2 を安定して表示できる液晶モニター or TV を使って FF7RB をプレイする *5
  • FF7RB のアップデートでゲーム画面の露出調整が可能になることを期待する
    • 現状のゲーム内の「グラフィックス設定」では露出調整はできないため白飛び問題を解決することができない *6
    • 余談だが筆者が調べたところ FF7RB では PS5 で行った HDR調整の結果が反映されていなかった
      • こちらもアプデで対応されることを期待する *7
      • FF16 は PS5 の HDR調整の結果が反映されていたので当然 FF7RB も反映されるものだと思っていた( FF16 での調査結果は過去記事を参照)
  • PS5 の出力信号をいじって輝度を半分程度まで下げる
    • DisplayHDR True Black で白飛びが発生している原因の一つに、FF7RB はゲーム画面の平均輝度が高い、という点がある *8
    • そのため HDR Reference White に対する HDR表示領域のヘッドルーム *9 が不足してしまっている
    • これを改善するために輝度を 0.5倍する 1DLUT を PS5 の出力信号に適用する
      • 1DLUT の計算式は右の通り  E'' = F^{-1}\left(F(E') \times g \right)
        •  E'': 1DLUT 適用後の信号
        •  F: SMPTE ST 2084 EOTF
        •  E': PS5 の出力信号
        •  g: 輝度の低下率。今回は 0.5 とする
    • DaVinci Resolve 上で予備実験をしたところ、平均輝度は下がるものの白飛びが改善する結果を得られた(当然だが)
    • 現状では PS5 の出力信号に 1DLUT を適用する仕組みは存在しないため非現実的な提案ではあるが、参考までに筆者が作った 1DLUT をここに置いておく

4. ソフトウェアバージョン

この調査を行った際のソフトウェアバージョンは以下の通りである。

  • PS5本体: 24.02-09.00.00.45-00.00.00.0.1
  • FF7RB: 1.010.000

5. 感想

筆者は本記事を書きながら少し反省した。本来であればこのトレードオフは前回の記事を書いている時に気づいて言及するべきであった。

(みっともないとは思いつつも)言い訳をすると、筆者は 2020年に BRAVIA KJ-65X9500G (液晶TV) を、2021年に 第5世代の iPad Pro (液晶タブレット) を購入し、 比較的安定して高輝度を表示できる環境に浸っていたため、OLED で生じるこうしたトレードオフを甘く見てしまっていた。今後は注意したい。

その一方で、現時点では大枚をはたいて高価なモニターを買っても、満足の行く HDR表示結果を得られないというのは少し悲しいと思った。 この状態が早く改善されると良いのだが…。

*1:AW3225QF の HDR表示設定

*2:撮影条件は次の通り。Camera: ILCE-7M4, F-stop: f/10, Exposure time: 1/5 sec, ISO: 800, Picture Profile: No.9 の S-Gamut3/S-Log設定

*3:撮影は HDRレンジであったが画像処理で 輝度を 0.21倍にして SDRレンジに変換している。SDR変換時にトーンマッピングは適用していない

*4:なお、輝度低下の影響を最小化するため FF7RB のプレイ時は遮光カーテンを閉め、照明も消してプレイすることにした

*5:実際、筆者の所有する BRAVIA でゲームをプレイした場合はこの問題は解決した。が、今度は液晶特有の視野角が狭い問題や、直下型バックライトの制御に起因する Blooming の発生などが起こるため片手落ちの対策にしかならない

*6:「画面輝度:まぶしさ」という設定項目があるが、これは FF7RB 側で高輝度領域にトーンマッピングを適用する処理のようで、パラメータを変更しても白飛びは改善されなかった

*7:というかゲームソフトが PS5 の HDR調整結果を無視することって可能だったんですね…

*8:主観評価ではあるが、少なくとも FF16 と比較すると明らかに明るい

*9:筆者の過去記事で紹介した HDR Capacity のこと